「関東甲信越」など緩やかな回復基調~消費による地域経済の下支えは続くか?

2023年7月 大和地域AI(地域愛)インデックス

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  • 経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄
  • 経済調査部 主任研究員 新田 尭之
  • 経済調査部 研究員 中田 理惠

サマリー

◆2023年7月の大和地域AI(地域愛)インデックスは、「関東甲信越」を筆頭に「中国」「近畿」「東北」で改善したが、「北陸」「東海」は横ばい、「九州・沖縄」「北海道」「四国」では悪化した。

◆分野別に見ると、家計関連のインデックスは、消費が「東北」「中国」「近畿」などで改善した。特に「東北」では、コンビニエンスストアの売上や乗用車の新車登録台数、飲食・宿泊などのサービス消費が改善している。一方、「九州・沖縄」「四国」では改善している分野もあるが、家電販売の悪化が消費全体を押し下げている。また、住宅投資は販売価格の上昇によって「関東甲信越」で前回より悪化している。そうした中、雇用・所得環境は「北海道」でわずかに改善したが、他の地域で前回から大きな変化はなかった。人手不足による賃上げの動きもあるが、物価高の影響もあり、以前よりも消費の増勢は鈍化しているようだ。企業関連では、企業マインドが「関東甲信越」「中国」「東海」「北陸」「近畿」など多くの地域で改善した。全国的に宿泊・飲食サービス、食料品、輸送用機械などで改善傾向を示している。設備投資はデジタル化・脱炭素化・省力化・経済活動の正常化を背景に、「四国」「東海」で改善が見られた。一方で、生産は「関東甲信越」で改善したものの、「東海」「北陸」「北海道」「九州・沖縄」では悪化しており、地域で違いが見られる。特に「北海道」では、輸送機械や電気機械、「北陸」では生産用機械において生産が悪化している。輸出と公共投資は前回から大きな変化はなかった。

◆全国的に見ると、地域経済は緩やかな回復基調にある。消費は従来ほどの増勢は見られないものの、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の5類移行に伴って外出機会が増加しており、緩やかな改善が期待できる。また、企業の業績回復や市場拡大を見込んで多くの地域で企業マインドが改善しており、これが設備投資を下支えするだろう。一方で、生産は特に海外における需要低迷などの影響を受けやすく、地域により異なる動きが見られる。今後も地域経済は回復基調が続くと予想されるが、引き続き、経済活動の正常化等に伴う物価上昇と賃上げの好循環の持続性や海外経済の動向などは注視する必要があるだろう。特にここ暫くの間、地域経済を下支えしてきた消費の今後の動きについて見守る必要がありそうだ。

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