動き始めた地域医療構想の意義と課題

~病床再編で進む医療の効率化~『大和総研調査季報』 2017年夏季号(Vol.27)掲載

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  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 亀井 亜希子

サマリー

団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据え、地域の実情に合わせた医療提供体制を構築するための計画である地域医療構想が実行段階に入った。地域医療構想では、医療機関の自主的な取り組みや関係者間の協議により、全国341の構想区域ごとに病床機能の分化・連携が進められる。


2025年の病床数は全国で2015年比6%の削減が必要とされる見通しだが、地域別に見た将来像は大きく異なる。都市部では病床数を増やす必要がある一方、約8割の構想区域では削減する必要があり、そのおよそ半分は20%超の削減が見込まれる。機械的な試算ではあるが、地域医療構想の実現により、入院医療費は5~10%程度抑制されると推計される。


地域医療構想を実現するための主な課題としては、①病床機能報告制度の改善、②病床機能の分化・連携を着実に進めるための制度対応、③約30万人と見込まれる慢性期の入院患者の新たな受け皿の確保——の3つが挙げられる。


人口減少・高齢化は長期に進展すると見込まれ、医療需要はそれを反映して変化するだろう。地域医療構想の枠組みを制度インフラとして定着させ、2025年以降も医療提供体制を定期的に見直していくべきである。


大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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