サマリー
◆“民泊” に対する世間の関心が高まる中、“新たな民泊制度”(※1)とともに国家戦略特別区域の制度を利用した“もうひとつの民泊”(特区民泊)が東京都大田区において実施段階に入っている。
◆国家戦略特区の目的は成長戦略にあり、特区民泊は、同制度の“旅館業法の特例”を活用した民泊である。経緯からして、訪日外国人を対象とした短期滞在施設の整備を通じて都市の経済成長を促す点に着目したものといえる。
◆大田区の例から特区民泊制度の具体的な姿をみることができる。滞在施設の使用期間が最低7日以上であり、実施区域は原則的に旅館業法と同様、一居室の床面積は25平米以上といった厳しい規定となっている。特区における国家の成長戦略であれば、参入のハードルが現時点では高いと考えられる。
◆特区民泊制度は、その経緯からすれば、“新たな民泊制度”と異なる理念の上に立つものかも知れない。厳しい条件を課される特区民泊の今後の姿として、引き続き成長戦略に位置づけられるのか、もしくはシェアリングエコノミーの一端を担う新たな民泊制度に歩みよるのか、今後の議論の動向を見守りたい。
(※1)市川拓也「注目の“民泊”制度を巡る考察(1) ~高まる民泊ニーズと制度設計について~」(2016年1月25日)、同「注目の“民泊”制度を巡る考察(2) ~民泊を巡る諸問題とシェアリングエコノミーを切り拓く新制度導入へ向けた今後の課題~」(2016年2月1日)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
シェアリングエコノミー導入に向けた取り組みと課題
~日本における民泊、ライドシェア等の制度的な対応について~
2016年08月02日
-
注目の"民泊"制度を巡る考察(2)
~民泊を巡る諸問題とシェアリングエコノミーを切り拓く新制度導入へ向けた今後の課題~
2016年02月01日
-
注目の"民泊"制度を巡る考察(1)
~高まる民泊ニーズと制度設計について~
2016年01月25日
同じカテゴリの最新レポート
-
大介護時代における企業の両立支援
〜人的資本のテーマは「介護」にシフト〜『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
2025年度の健康経営の注目点
ISO 25554の発行を受け、PDCAの実施が一段と重視される
2024年12月24日
-
健康経営で高評価を得るポイント
政策の方向性を踏まえた対応と、データ活用による効果検証が必要
2024年09月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日