課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)

様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証

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2024年12月04日

サマリー

◆自由民主党・公明党・国民民主党の3党が「103万円の壁」を引き上げることで合意した。「103万円の壁」には所得税の課税最低限と、扶養控除等を受けられる上限年収の2つの意味がある。本レポートでは、このうち前者につき、あるべき姿を論じる。

◆インフレ調整の観点からの所得税の課税最低限の引上げ率は、物価上昇率による10%~15%が妥当(平均賃金上昇率による場合も同程度)と考えられる。この場合、政府の所得税の減収額は年0.5~0.7兆円、住民税の減収額は同0.5~0.8兆円、合計で同1.0~1.6兆円となる。家計は、本人年収500万円の世帯で所得税が年1.0~1.5万円、住民税が同0.9~1.5万円、合計で同1.9~3.0万円の減税となる。この程度であれば、インフレに伴う税収の上振れ分でカバーでき、代替財源は必要ないだろう。

◆仮に、所得税のみ課税最低限を引き上げ、住民税の課税最低限を維持すると、減税が比較的高所得の者に集中し、低所得者に厳しい税制となる。住民税も物価高により税収は上振れしている。住民税も物価上昇分程度の課税最低限の引上げを行い、国から地方への減収分の補填を行わない形とすることが妥当である。

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