学生の「103万円の壁」撤廃による就業調整解消は実現可能で経済効果も大きい

学生61万人の就業調整解消で個人消費は最大0.3兆円増の可能性

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2024年11月11日

サマリー

◆国民民主党が問題提起する「年収の壁」の見直しへの関心が集まっている。就労調整の要因となっている「年収の壁」は、学生と被扶養配偶者で直面する状況が異なる。学生が直面する「103万円の壁」と「130万円の壁」の引上げは政府の税・社会保険料の収入にほぼ影響を与えない。学生本人の将来の年金給付にも問題を及ぼさないため、実現可能性が高い。一方、被扶養配偶者については、配偶者手当の「103万円の壁」の緩和は可能だが、「106万円の壁」と「130万円の壁」は、企業の社会保険料負担や将来の低年金者を増やす懸念などから、その見直しは難しい。

◆本レポートでは、実現可能性の高い改正案として、学生の税・社会保険の扶養基準である「103万円の壁」および「130万円の壁」を180万円まで引き上げた場合の学生の就労と日本経済への影響を試算した。その結果、61万人の学生が希望通り働けるようになり、労働供給量は年間0.4~3.3億時間、雇用者報酬は同610~4,560億円、個人消費は同430~3,190億円増加する。学生の税・社会保険の扶養基準引上げは政府の減収をほぼ生じさせずに学生のいる世帯の所得を増やし、企業の人手不足を緩和し、消費も活性化するメリットの多い施策と評価できよう。

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