2023年08月25日
サマリー
◆働き方に中立な制度とするため第3号被保険者制度を見直す際には、第3号被保険者でなくなる者が着実に年金保険料を支払えるようにするための「受け皿」を整備する必要がある。本レポートでは、その受け皿として、週20時間未満の雇用者への被用者保険の適用拡大につき検討する。
◆週20時間未満の雇用者への適用拡大の方法としては、事業主のみに報酬の9.15%の厚生年金保険料を課す「厚生年金ハーフ」の提案があるが、第3号被保険者制度見直しの際の受け皿としては不十分である。そこで、新たに「1.5号/2.5号被保険者の創設」を提案する。具体的には、週20時間未満の雇用者のうち元第1号被保険者を、「1.5号被保険者」として扱い、報酬の18.3%(労使折半)の厚生年金保険料が国民年金保険料に満たない場合は労働者に差額の国民年金保険料の納付を求める。元第3号被保険者は、「2.5号被保険者」として扱い、厚生年金保険料が国民年金保険料に満たなくても差額の納付を求めないものとする。
◆第3号被保険者の範囲縮小と同時に「1.5号/2.5号被保険者の創設」も行う「超改革シナリオ」における就業への影響につき試算したところ、週20時間以上の労働者がベースシナリオ比で226万人増加する結果となった。一方、第1号被保険者数増加の影響は抑えられ、少なくとも現状より国民年金の財政が悪化しない結果となった。
◆試算からは、「1.5号/2.5号被保険者制度」を導入すれば、第3号被保険者制度を見直すための条件が整うことが示唆された。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2024/5/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2024年05月02日
-
FOMC 利下げ開始の先送りを示唆
再利上げには消極的、2024年内の利下げ開始は明言せず
2024年05月02日
-
少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実
持分法適用関係についてもCG報告書開示を要請
2024年05月01日
-
ユーロ圏はテクニカルリセッションを脱出
1-3月期GDPは前期比+0.3%、市場予想から上振れ
2024年05月01日
-
新興国通貨安は脱炭素に向けた投資の障害に
~通貨バスケットに連動する債券(WPU連動債)で為替リスクを低減~
2024年05月08日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日