金融庁のNISA抜本的拡充要望と今後の展望

非課税枠の水準によっては中間層の資産所得倍増を達成し得る内容

RSS

2022年09月02日

サマリー

◆金融庁は、2022年8月31日に令和5年度税制改正要望(以下、要望)を公表した。要望には、政府として本年末までに策定する「資産所得倍増プラン」のメニュー案が並べられている。

◆要望では、NISAの抜本的拡充策として、2024年から施行予定となっていた新NISAを事実上白紙撤回した上で、「簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度」にするとしている。具体的には、制度の恒久化および非課税保有期間の無期限化と年間非課税投資額の拡大を掲げている。ただし、制度を恒久化しても累計の非課税投資額は青天井にせず、一定の上限を設けるとしている。

◆大和総研が行った試算では、現役期の中間層の資産所得倍増の実現には、①NISA口座の開設意向のある世帯が実際にNISAを利用できるようにする、②現状の3倍以上の非課税枠を用意する、という2点が重要であるという示唆を得ており、金融庁のNISAの抜本的拡充策は非課税枠の水準によってはこの2点をクリアできるものと評価できる。

◆今後、政府や与党の税制調査会、および新しい資本主義実現会議などにより2023年度の税制改正内容の審議が行われる。その際は、まずは制度の恒久化および非課税保有期間の無期限化が認められるか、次に非課税枠の水準が焦点となろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート