サマリー
◆政府は、本年末までにNISAの抜本的拡充を含む「資産所得倍増プラン」を策定し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進める方針である。もっとも、政府が活用するとしている約2,000兆円とされる家計金融資産の中には、年金資産や個人事業主の事業性資金も含まれており、かつ、富裕層や高齢者に偏在している面もあり、「現役期の中間層」には投資に回せる十分な金融資産がないとの指摘もある。
◆そこで、本レポートでは、まず、年金資産や個人事業主の事業性資金を除いた「純然たる家計金融資産」のうち、現役期の中間層の保有額を推計した。推計では、純然たる家計金融資産は2019年末現在で1,330兆円であり、そのうち、現役期の中間層が保有するのは約4分の1で、総額340兆円、1世帯あたりでは1,150万円であった。
◆その上で、現役期の中間層につき、世帯主年齢および世帯年収により39ケースに細分し、各ケースの資産および年間収支を踏まえ、NISAの抜本的拡充後の5年後の有価証券保有残高を試算した。試算では、NISA口座の開設意向がある有価証券非保有世帯が全てNISAを利用し、かつNISAの非課税枠を現状の3倍に拡大した場合、現役期の中間層が保有する有価証券総額が5年後に現状の約2倍に増加し、同層が有価証券から得る資産所得も現状の約2倍に増加する結果となった。
◆試算からは、現役期の中間層の資産所得倍増の実現には、①NISA口座の開設意向のある世帯が実際にNISAを利用できるようにする、②現状の3倍以上の非課税枠を用意する、という2点が重要であることが示唆される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
第214回日本経済予測
景気下振れリスクが高まる中で経済正常化は進むか ①資産所得倍増、②黒田日銀の課題、③米国景気後退、を検証
2022年08月19日
-
金融所得課税を含む所得税の垂直的公平性の国際比較
「1億円の壁」は米英独にも共通して確認できる現象
2022年03月31日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日