2025年04月03日
サマリー
◆英国では2025年後半に、非上場株式の新しい取引プラットフォーム(PISCES)の試験運用(サンドボックス)が開始される見込みである。PISCESとは、非上場企業が一時的に株式を公開し、その株式が期間限定で売買される流通市場である。その目的は、金融サービス分野の抜本的改革の一環として、非上場株式のセカンダリー取引を促進し、投資機会の多様化と非上場企業の成長を支援することにある。
◆PISCESは、プライベート市場における慣行や投資家のリスク許容度を基に制度設計する「プライベートプラス」アプローチを採用している。当初の案では、相場操縦やインサイダー取引を規制する市場濫用規制を適用する予定であった。しかし、特にPISCES参加企業の負担削減の観点から、コア開示情報と追加情報の提供を求める開示制度に変更されたほか、インサイダー取引の規制も外された。また、PISCES独自の特徴として、PISCES参加企業は株式の最低価格や最高価格を設定できる。
◆非上場企業への投資はより高いリスクを伴うため、適切な投資家保護が必要不可欠である。他方で、公開市場と同等の規制を持ち込んでしまえば、非上場株式の流通市場としての魅力が損なわれることにもなる。日本でも非上場株式の流通促進に向けた議論が活発化している中、規制緩和と投資家保護のバランスを探る上で、PISCESサンドボックスの展開が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
投資信託への非上場株式の組入れ
流動性リスク管理と非上場株式の評価に係る米国の先行事例
2024年03月12日
-
転換期にあるプライベート・エクイティ市場
~「冬の時代」でも進化する米国のベンチャー・エコシステム~『大和総研調査季報』2022年秋季号(Vol.48)掲載
2022年10月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
小規模投資信託削減のための約款変更・繰上償還がより容易に
投信法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)の公表
2025年05月14日
-
外為法の対内直接投資審査制度の改正案
中国関連組織が投資する場合を念頭に、審査対象となる範囲を拡大
2025年03月26日
-
インターネット取引におけるプロダクトガバナンス
非対面取引でのプロダクトガバナンス体制についての欧州からの示唆
2025年03月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日