2023年10月12日
サマリー
◆金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」第1回会合(2023年6月5日)では、大量保有報告制度に係る論点として、重要提案行為や共同保有者の範囲の明確化、デリバティブの取扱い、エンフォースメント(実効性の確保)の強化等が挙げられた。秋以降の会合において、大量保有報告制度に係る議論が本格化するとみられる。
◆大量保有報告制度とは、上場会社等の株券等保有割合が5%超となった者に大量保有報告書の提出を義務付ける制度である。大量保有報告書の提出後に、株券等保有割合が1%以上増減した場合や記載すべき重要な事項の変更があった場合には、報告義務発生日から5営業日以内の変更報告書の提出が求められる。
◆本稿では変更報告書の提出状況について調査した。「2022年6月1日~2023年5月31日」の1年間には5,271件の変更報告書が提出されており、うち754件に提出遅延が生じていた。特に有価証券報告書等の提出義務者以外の内国法人・組合(208件)と個人(372件)において提出の遅延が目立った。
◆大量保有報告書だけでなく、変更報告書についても一定割合の提出遅延が見られたことからも、エンフォースメントが課題として挙げられるだろう。公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループにおいては、バランスの取れたエンフォースメントの在り方についても、開示情報利用者の利便性と提出者の実務の実態も考慮した議論を期待したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
令和6年金商法等改正法 公開買付制度の改正内容の詳細
30%ルール適用除外となる僅少買付け等は0.5%未満の買付け等に
2025年07月15日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日