2022年06月27日
サマリー
◆2021年9月から開催されていたディスクロージャーワーキング・グループでの検討をとりまとめた「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて-」(DWG報告)が2022年6月に公表された。本稿では、DWG報告の論点の中でも、「重要な契約」の開示の拡充について、ポイントや今後の展望を取り上げる。
◆DWG報告では、役員候補者指名権等の合意や議決権行使内容を拘束する合意などの「企業・株主間のガバナンスに関する合意」について、「重要な契約」として契約の概要、合意の目的、当該契約の締結に関する社内ガバナンス、企業のガバナンスに与える影響を有価証券報告書等で開示すべきとされている。
◆また、保有株式の譲渡等の禁止・制限の合意や保有株式の買増しの禁止に関する合意などの「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」について、「重要な契約」として契約の概要、合意の目的、当該契約の締結に関する社内ガバナンスを有価証券報告書等で開示すべきとされている。
◆さらに、ローンと社債に付される財務上の特約(コベナンツ)に関して、特に重要性が高いと見込まれるものについて、「重要な契約」として融資借入契約又は社債等の概要、財務上の特約の概要を有価証券報告書・臨時報告書で開示すべきとされている。
◆今後、DWG報告の内容を踏まえた開示拡充のための法令の改正が想定され、早ければ2023年からの適用も考えられる。企業は、これまで個別に規定されていなかった契約について、改めてどの契約が開示しなければならない「重要な契約」なのかを検討することが求められる。また、今回のDWG報告で個別に指摘されていない契約も含めて、投資判断への影響を十分に考慮して、真に開示すべき「重要な契約」を判断することが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
令和6年金商法等改正法 公開買付制度の改正内容の詳細
30%ルール適用除外となる僅少買付け等は0.5%未満の買付け等に
2025年07月15日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日