2022年06月20日
サマリー
◆2021年9月から開催されていたディスクロージャーワーキング・グループでの検討をとりまとめた「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて-」(DWG報告)が2022年6月に公表された。本稿では、DWG報告の論点の中でも、サステナビリティ情報の開示の拡充について、ポイントや今後の展望を取り上げる。
◆DWG報告では、新たに有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄を新設すべきとされている。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークを参考に、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの柱に基づいた開示が求められている。特に「ガバナンス」、「リスク管理」については、全ての企業が開示すべきとされている。
◆気候変動に関する情報開示については、企業が業態や経営環境等を踏まえ、気候変動対応が重要であると判断する場合、サステナビリティ情報の記載欄の4つの柱に基づいた開示を行うべきとされている。
◆人的資本に関しては「人材育成方針」(多様性の確保を含む)や「社内環境整備方針」や、その方針に整合的で測定可能な指標の設定、その目標、進捗状況について開示すべきとされている。多様性については、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差について開示すべきとされている。
◆今後、DWG報告の内容を踏まえた開示拡充のための法令の改正が想定され、早ければ2023年からの適用も考えられる。企業としては、最低限求められるサステナビリティに関する「ガバナンス」、「リスク管理」の体制の整備や、人的資本・多様性に関する指標の開示に備えるとともに、自社にとって重要なサステナビリティ情報とは何かについて検討を深めることが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
英国が非上場株式の流通市場を創設へ
非上場株式のセカンダリー取引を促進する「PISCES」とは
2025年04月03日
-
外為法の対内直接投資審査制度の改正案
中国関連組織が投資する場合を念頭に、審査対象となる範囲を拡大
2025年03月26日
-
インターネット取引におけるプロダクトガバナンス
非対面取引でのプロダクトガバナンス体制についての欧州からの示唆
2025年03月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日