2020年11月12日
サマリー
◆2019年1月31日、「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(以下、改正開示府令)が公布・施行され、有価証券報告書等における役員報酬に関する開示が拡充された。
◆本稿では、拡充された役員報酬の開示項目について、東証上場企業のうち時価総額上位500社のデータを集計し、内容を整理する。今回は、報酬プログラム(報酬ミックス・報酬額、業績連動報酬の内容、株式報酬の導入状況、報酬額の決定方法)についての記載内容から、わが国の役員報酬の姿をとらえつつ、開示の際のポイントを検討する。
◆時価総額上位500社の開示を見ると、報酬設計について、取締役・執行役の報酬に占める業績連動報酬の割合は約3割であった。また、報酬額は欧米と比較すると低い水準となっている。業績連動報酬の内容について、指標としては営業利益などの利益を示す指標を採用する企業が多いほか、ESGに関連する指標を導入する企業も見受けられた。また、業績連動報酬の額の決定方法については、詳細な開示をしている企業は全体の2割弱である一方で、決定方法の内容が不明瞭である企業が2割強、決定方法に言及していない企業が半数以上と、指標がどのように報酬額の決定に結び付いているのかが十分には開示されていなかった。
◆企業としては、自社の経営方針にマッチした報酬設計を行うとともに、報酬プログラムの具体的な内容の開示に努めることが求められる。投資家等から見て役員報酬がどのように決定されているのかがわからなければ、役員報酬の機能を正しく評価してもらえないだけでなく、個別役員の報酬額の開示も求められることで企業負担がかえって増加しかねない。今後、より丁寧な説明が行われることで、企業と投資家等との間の認識の齟齬がなくなることが期待される。
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