2020年11月11日
サマリー
◆2019年1月31日、「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(以下、改正開示府令)が公布・施行され、有価証券報告書等における役員報酬に関する開示が拡充された。
◆本稿では、拡充された役員報酬の開示項目について、東証上場企業のうち時価総額上位500社のデータを集計し、内容を整理する。今回は、特に報酬ガバナンス(報酬に係る方針の決定権限保有者、取締役会・報酬委員会の手続や活動内容、報酬に関する株主総会の決議)についての記載内容を検討し、示唆を得る。なお、本レポートは二本立ての構成となっており、次回は報酬プログラム(業績連動報酬に用いられる指標や算定方法など)についてまとめる。
◆時価総額上位500社の開示を見ると、報酬に係る方針の決定権限については、取締役会が決定権限を有するという開示が最も多いが、取締役会が代表取締役等へ算定方法等や個別報酬額の決定を委任している場合も多く見受けられた。なお、報酬の決定方法と報酬額でそれぞれ決定権限保有者が異なるなどの複雑なケースも見受けられた。また、取締役会・報酬委員会の活動内容については、約半数の企業が活動回数・日程、審議内容を記載していたが、参加メンバーの構成や氏名まで記載している企業は一部に限られた。
◆欧米の動向やコーポレートガバナンス・コードの改訂等を受け、昨今では、報酬の決定を代表取締役等に委任する従来の慣行から、新たに設置された任意の報酬委員会が報酬決定に関与するような潮流にあると考えられる。報酬ガバナンスが変容しつつある今、複雑化する報酬ガバナンスの内容をわかりやすく投資家等に伝えることが、開示企業にとっても重要であろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
役員のインセンティブ報酬拡大と開示動向~改正開示府令への対応状況~
時価総額上位500社の役員報酬 報酬プログラム編
2020年11月12日
-
改正開示府令の施行(役員報酬の開示拡充へ)
報酬額等の決定方針、業績連動報酬などについて開示が拡充される
2019年02月26日
-
地域銀行の役員報酬の姿
業績連動報酬の割合は約2割、指標には当期純利益を使用
2019年09月05日
同じカテゴリの最新レポート
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
日米で共通する株主提案・議決権助言の課題
米国BRTが株主提案権と議決権行使助言業に関連する制度改正を提言
2025年05月28日
-
小規模投資信託削減のための約款変更・繰上償還がより容易に
投信法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)の公表
2025年05月14日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/6/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年06月03日
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
2025年1-3月期法人企業統計と2次QE予測
前年比で増収増益も製造業は不調/2次QEではGDPの下方修正を予想
2025年06月02日
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
“大規模で美しい”軍事パレードはピーナッツか、それとも特大のプレゼントか
2025年06月04日
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日