2016年04月25日
サマリー
◆2016年4月15日、金融庁は、「金融システムの安定に資する総損失吸収力(TLAC)に係る枠組み整備の方針について」(本邦TLAC方針)を公表している。
◆“TLAC”とは、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)の総損失吸収力(Total Loss-Absorbing Capacity)をいう。本邦では2019年3月31日から実施される。
◆本邦TLAC方針では、いずれも銀行持株会社である本邦のG-SIBsについての望ましい秩序ある破綻処理戦略について述べたうえ、このような破綻処理戦略を実現するためのTLACを勘案した資金構造及び破綻処理の具体例を示している。
◆当然のことながら、本邦TLAC方針は、金融安定理事会(FSB)による「TLAC最終報告」を前提としており、その内容に特段のサプライズはない。
◆強いて気づいた点を挙げるとすれば、内部TLACを分配する主要子会社に、海外子会社のみならず、国内に所在する子会社も選定する考えを明らかにしている点である。これにより、本邦G-SIBsグループ内の預金取扱銀行や証券会社に内部TLACが適用される可能性が明確に示されている。
◆なお、本邦TLAC方針には、TLAC債のリスク・ウェイトに関する記述はない。TLAC債への投資を考えている金融機関にとっては、この点が最大の関心事であることから、この不透明感の払拭が市場形成には不可欠となろう。
◆そのため、TLAC保有のダブルギアリングに関するバーゼル銀行監督委員会(BCBS)の市中協議文書が最終化される2016年中には、TLAC債のリスク・ウェイトに対する考え方が明らかになるものと思われる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
TLAC保有のダブルギアリング規制
【BCBS最終規則】ダブルギアリングにならない部分のRWは20%か
2016年10月19日
-
TLAC(G-SIBsの追加規制)の最終報告
【FSB】RWA比18%以上、レバレッジ比率6.75%以上のTLACの維持へ
2015年11月11日
-
TLAC保有のダブルギアリング、Tier 2控除?
【BCBS市中協議】ダブルギアリングにならない部分のRWは20%か
2015年11月25日
-
未だ不透明なTLAC債のリスク・ウェイト
2016年02月10日
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日