本邦TLAC債、ベイルイン条項は不要

【金融庁:TLACに係る枠組み整備の方針】リスク・ウェイトは未定

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  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

サマリー

◆2016年4月15日、金融庁は、「金融システムの安定に資する総損失吸収力(TLAC)に係る枠組み整備の方針について」(本邦TLAC方針)を公表している。


◆“TLAC”とは、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)の総損失吸収力(Total Loss-Absorbing Capacity)をいう。本邦では2019年3月31日から実施される。


◆本邦TLAC方針では、いずれも銀行持株会社である本邦のG-SIBsについての望ましい秩序ある破綻処理戦略について述べたうえ、このような破綻処理戦略を実現するためのTLACを勘案した資金構造及び破綻処理の具体例を示している。


◆当然のことながら、本邦TLAC方針は、金融安定理事会(FSB)による「TLAC最終報告」を前提としており、その内容に特段のサプライズはない。


◆強いて気づいた点を挙げるとすれば、内部TLACを分配する主要子会社に、海外子会社のみならず、国内に所在する子会社も選定する考えを明らかにしている点である。これにより、本邦G-SIBsグループ内の預金取扱銀行や証券会社に内部TLACが適用される可能性が明確に示されている。


◆なお、本邦TLAC方針には、TLAC債のリスク・ウェイトに関する記述はない。TLAC債への投資を考えている金融機関にとっては、この点が最大の関心事であることから、この不透明感の払拭が市場形成には不可欠となろう。


◆そのため、TLAC保有のダブルギアリングに関するバーゼル銀行監督委員会(BCBS)の市中協議文書が最終化される2016年中には、TLAC債のリスク・ウェイトに対する考え方が明らかになるものと思われる。

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