ユーロ圏複合危機に風穴は開いたか?

重要なのは決まったことではなく決まらなかったことの今後

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2012年07月03日

  • 児玉 卓

サマリー

◆EU・ユーロ圏が打ち出す政策の意味合いは、「財政統合への距離を縮めたか」どうかで判断される必要がある。その点、6月28日、29日のサミットに関して最も重要なことは、合意文書がユーロ共同債について一切触れなかったことである。

◆EFSF、ESMが各国政府を介さずに銀行に資本注入することが可能になるとされたことが、危機収束に向けた前進とみなされがちであるが、ESM等の原資の過少さを解決する議論が欠落している。銀行同盟の主要要素である、銀行監督、破たん処理、預金保険制度の統一の内、銀行監督の統一という財政移転を伴わない点のみが議題に上ったことも、「できるところからやる」という、これまでの手法そのままである。

◆結局、危機の最終解である財政統合への距離感を決めるのは、今回決まったことではなく、決まらなかったことの今後の扱われ方である。

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