2011年11月22日
サマリー
◆現行のMiFID(オリジナルMiFID)は、金融危機によりその欠点が露呈されたことから、施行後まもなくして見直しを迫られている。露呈された欠点とは、平たくいうと、金融危機の一因となったと考えられている、新たな取引基盤(trading platform)や取引活動の発展が、オリジナルMiFIDの規制の枠外にあることである。
◆前者の例がいわゆる「ダークプール」、後者の例が本稿のテーマであるOTC デリバティブである。
◆OTCデリバティブに対する規制の議論は、第3回G20金融サミット「ピッツバーグ・サミット」以来、国際的に重要度を増してきている。それは、ピッツバーグ・サミットが、2012年末をデッドラインとする、OTCデリバティブ市場の改善((1)「取引所等取引」、(2)「清算集中」、(3)「TR報告」、(4)「自己資本規制」)にコミットしているためである。
◆EUでは、すでに、EMIRドラフト((2)「清算集中」、(3)「TR報告」)、CRDⅣドラフト((4)「自己資本規制」)という規制イニシアティブがとられてきている。
◆MiFID Ⅱドラフトは、標準化されており(清算適格があり)、十分な流動性を有するデリバティブについて、(1)「取引所等取引」を強制する旨提案している。
◆そして、(1)「取引所等取引」を促進すべく、オリジナルMiFIDの規制対象となる二つの取引施設(規制市場およびMTF)に加えて、新たな取引施設概念としてOTFを導入する旨提案している。
◆また、デリバティブの透明性を強化すべく、取引情報等の開示規制(取引前透明性および取引後透明性)の適用範囲を非株式金融商品にまで拡大している。
◆MiFID Ⅱドラフトは、G20コミットメントのデッドラインに合わせて、2012年末までに最終ルール化されることが想定されている。
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