2024年10月23日
サマリー
◆近年、グリーン社会の実現に向けた事業者間の連携を模索する動きがあるが、独占禁止法への抵触を懸念する声も根強い。そこで、公正取引委員会は「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(グリーンガイドライン)を改定し、グリーン社会の実現に向けた企業活動(以下、グリーン化活動)と競争政策の関係を包括的に整理した。
◆改定グリーンガイドラインは「共同の取組」、「取引先事業者の事業活動に対する制限及び取引先の選択」、「優越的地位の濫用行為」、「企業結合」という四つの行為類型について、豊富な想定例を交えつつ、それぞれの企業活動が独占禁止法上問題となるか否かを検討している。全体としては「グリーン社会の実現に向けた事業者等の取組は基本的に独占禁止法上問題とならない場合が多い」との見解が示されているものの、優越的地位の濫用行為については慎重な記述も目立つ。
◆今後の論点としては、独占禁止法の適用除外制度が挙げられる。公正取引委員会は適用除外制度の導入に消極的であるが、グリーン化活動の独占禁止法への抵触を懸念する事業者の声も根強い。今後の対応として、グリーンガイドラインの再改定や相談事例等の積極的な公表が示唆されており、情報のアップデートに留意すべきである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
独占禁止法の企業結合規制等の議論
地方銀行等の経営統合への適用について、来年夏に向け議論
2018年12月26日
-
流通・取引慣行ガイドライン改正案~セ-フ・ハーバー
「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」の改正案
2016年05月19日
同じカテゴリの最新レポート
-
株主提案天国は終了か?:テキサス州法改正
株主提案権制度をSEC規則による規制から州法による規制に変える
2025年05月19日
-
東証投資単位引き下げで変わる株主総会
議決権1つの価格が下がれば、株主提案権も「大安売り」に
2025年04月28日
-
社外取締役の選任状況から見る課題と対応
取締役会のスリム化、兼任を含む企業ごとのアプローチの検討が必要
2025年04月11日
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日