米国経済見通し 高まるスタグフレーションリスク

2025年の実質GDP成長率見通しは前年比+1.3%に改定

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2025年04月23日

  • 経済調査部 主任研究員 矢作 大祐
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆トランプ大統領は4月2日に公表した相互関税に関して、4月9日には中国を除く国・地域に対する上乗せ税率の適用を90日間停止した。こうした変更に伴い、米国経済への悪影響は、当初の想定(4月2日時点)に比べて、幾分緩和すると考えられる。しかし、景気を押し下げ、インフレ率を押し上げるというスタグフレーションリスクが高いことに変わりはない。

◆足元の経済指標を見ると、3月の小売売上高は堅調な伸びとなり、鉱工業生産も製造業を中心に底堅い結果となった。インフレ指標に関しては、3月のCPIはヘッドラインが前月比でマイナス、コアCPIは減速した。現時点では大幅な景気悪化は見られず、インフレ指標も落ち着いているといえよう。しかし、駆け込み消費やそれに伴う企業の受注増が影響していると考えられ、先行きの反動減が想定される。また、期待インフレ率に沿って粘着性の高いインフレ指標が上昇する可能性がある。米国のスタグフレーションリスクは小さくなっておらず、米国経済に黄色信号は灯ったままといえる。

◆米国経済がスタグフレーションリスクに直面する中、FRBは様子見姿勢を維持している。インフレ再加速への警戒感から、FRBは迅速な金融政策運営が困難な状況にあり、米国の景気悪化リスクを高め得るだろう。景気悪化リスクに対しては、減税による景気の下支えが期待されている一方で、米10年債利回りが上昇するなど、財政悪化リスクも懸念されている。財政リスクを抑制するために、減税規模が縮小されれば、景気の下支え効果も抑制される。結局は、景気悪化懸念の根源である追加関税措置をマイルド化させ、景気への悪影響を軽度にとどめ、大掛かりな景気対策の必要性を低下させられるかが、米国経済および財政を巡るリスク軽減に向けて重要となろう。

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