サマリー
◆2025年4月2日にトランプ大統領は、「相互関税」の詳細を発表した。「相互関税」は各国共通のベースライン関税である10%(4月5日発動)に加え、57カ国・地域に追加的な税率が上乗せされる(4月9日発動)。「相互関税」に伴い、米国の実質GDPは最大で0.8%程度下押しされ、CPIは同1.1%押し上げられると試算され、スタグフレーション懸念が高まろう。
◆「相互関税」による米国経済の景気悪化が想定される中で、市場参加者は財政・金融政策による景気の下支えを期待している。トランプ政権は2025年5-6月の減税成立を目指しているが、予算の多くは2025年末に切れる2017年減税の延長/恒久化に用いられることから、財政政策による短期的な景気の押し上げ効果は限定的と考えられる。予算制約もあることから、新規での減税策はチップ・残業代に対する所得税撤廃等の低中所得層向け減税が想定されよう。
◆金融政策については、当面は高インフレが想定され、短期的には利下げを見込みにくい。FRBは関税によるインフレ率上昇が一時的と確認できれば利下げの再開を検討し始めると考えられ、利下げ再開時期の目安としては2025年央から下半期が想定される。当面は景気の下支え策が見込みにくいことが米国経済の不安要素となるが、利下げによる景気の押し上げ効果が2025年10-12月期から発現し始め、2026年以降は減税の延長や新規での減税の効果も相まって景気回復が進むとみている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 駆け込みの反動一巡後の注目点は?
追加関税措置次第となる中、トランプ大統領を“TACO”と嘲るべからず
2025年06月24日
-
FOMC 様子見姿勢を継続
経済指標の基調の捉えにくさと正確性への懸念は利下げ遅延リスクを高める
2025年06月19日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日