サマリー
◆足元の景気は個人消費を中心に底堅く推移している。こうした中で、米国経済の先行きを左右する米大統領・上下院選挙が11月5日に行われた。景気が底堅く推移していることを踏まえれば、バイデン現政権の副大統領であるハリス氏および民主党に追い風が吹きそうだった。しかし、ふたを開けてみれば、共和党のトランプ氏が勝利し、上下院とも共和党が多数派というオール・レッドとなった。米国の有権者は、現状の民主党政権からの変化を望んだことになる。
◆米国の有権者の中でも、トランプ氏支持に回ったのは低中所得層だ。米国経済が底堅く推移する中でも、低中所得層の実質賃金や実質消費は高所得層に比べて見劣りする。低中所得層は不満を抱えており、政権交代を通じて、米国経済の変化を求めたといえる。なお、低中所得層の消費が伸び悩めば、個人消費や景気にも悪影響を及ぼしそうだが、米国の個人消費は高所得層のシェアが約6割と大きい。とりわけ、高所得層は足元の株高に伴う資産所得の増加によっても支えられており、資産効果が個人消費を押し上げていると考えられる。
◆約2カ月後にトランプ新政権が発足するが、低中所得層が期待するほどの生活の改善は見込みにくい。トランプ氏の景気対策である減税は高所得層への恩恵が大きい一方で、その財源となる追加関税措置は低中所得層への負担が大きくなりやすいと考えられる。高所得層がけん引役となり、個人消費の基調自体は急激には腰折れしにくいと考えられるものの、個人消費の4割強を占める低中所得層に恩恵が広がらなければ、個人消費の一段の改善も考えにくい点には注意を要する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
-
非農業部門雇用者数は前月差+17.7万人
2025年4月米雇用統計:景気への不安が高まる中で底堅い結果
2025年05月07日
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日