サマリー
◆足元までの経済指標を概観すると、個人消費や企業活動は冴えない結果となった一方、インフレ指標(CPI、PPI、輸入物価)に関しては、いずれも市場予想を上回り、インフレ率の高止まりリスクを意識させる結果となった。これらを金融政策に紐づけると、冴えない個人消費、企業活動に注目すれば、利下げを意識させる結果といえる一方、市場予想を上回ったインフレ指標に注目すれば、利下げが遠のくような結果といえる。
◆3月19日・20日のFOMCで公表されたドットチャートによると、2024年末時点のFF金利は4.6%(2024年内合計0.75%ptの利下げ)と、2023年12月時点の予想のままで据え置かれた。3月のFOMC前は、市場では利下げの後ずれが意識されていたが、2024年内の利下げ幅の見通しが据え置かれたことから、利下げ期待が再び高まった。
◆利下げのタイミングや利下げ幅に関しては、結局のところインフレ動向次第である。直近のインフレ指標が市場予想対比で上振れしたとはいえ、今後はFOMC参加者が予想するインフレ率の中央値を下回る伸びとなることが想定される。現時点では従来通り2024年央に利下げ開始がベースシナリオであり、利下げタイミングの後ずれはあくまでもリスクシナリオと考えるべきだろう。
◆また、今回のFOMCでは量的引き締め(QT)のペースの減速に関しても、近い将来に実施することが示唆された。市場のショックを未然に防ぎ、QTを結果的に長く継続することを目的としている。次回(4月30日・5月1日)FOMCでのQTのペースの減速がベースシナリオとなるが、当面は市場の流動性が枯渇していないかを注意する必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日