サマリー
◆2023年11月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+19.9万人と前月から加速した。自動車関連のストライキの終結による従業員の職場復帰が雇用者数を押し上げることは、市場予想(Bloomberg調査:同+18.0万人)にも織り込まれていたとみられるが、その予想を上回った。失業率については前月から0.2%pt低下し3.7%となった。このように11月の雇用統計は、雇用環境が緩やかに悪化してきた中で、底堅さを示す結果になったといえる。
◆また、11月の雇用統計では賃金上昇率が前月比で加速しており、賃金上昇圧力の根強さが見受けられる。その背景として、求人件数は減少しつつも依然として労働需給がタイトさを維持していることに加え、従業員の待遇改善の動きが広がったことが挙げられる。
◆金融政策運営に関しては、12月12・13日の次回FOMCでも金利の据え置きが想定される。パウエルFRB議長はブラックアウト期間(FOMCの12日前からFOMC参加者が金融政策に関する発言を停止する期間)直前の講演会で、先行きの利上げの可能性自体を残しつつも、次回FOMCでの利上げを示唆しなかった。今回の雇用統計が底堅い結果であったとはいえ、パウエル議長をはじめとしたFOMC参加者のこれまでの金利据え置きを示唆するスタンスを覆すほどの強い結果とはいえないだろう。他方で、底堅い雇用環境によって、FOMC参加者は利下げまでの距離が近くないと判断するかもしれない。2024年央での利下げ開始を期待する市場に対して、12月のFOMCで公表されるFOMC参加者のFF金利見通し(ドットチャート)はタカ派的なサプライズを起こす恐れがある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国、設備投資費用の即時償却を復活・拡張
製造業・情報産業の新規投資、及び対米直接投資の増加要因か
2025年10月07日
-
米国経済見通し 利下げ再開後の注目点は?
景気下振れリスクが懸念される時こそ、インフレ動向を注視すべき
2025年09月24日
-
FOMC 0.25%ptの利下げを決定
先行きの利下げペースに関しては予想がばらつく
2025年09月18日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日