サマリー
◆米10年債利回りの上昇やそれに伴う主要株価指数の下落などによってタイト化していた金融環境は、国債需給に改善の見込みが立ったことや、追加利上げの機運が低下したことで、10月末以降に緩和方向へと転じた。また、CPIは減速感を強める一方、小売売上高は底堅い結果となり、景気の大幅な悪化を経ずに、インフレが減速するというソフトランディング期待は高まっている。
◆他方で、個人消費に関しては若年層を中心に消極化しつつあり、下振れリスクが高まっている。若年層は、失業率が上昇している中で、学生ローンの返済にも追われ、消費を抑制せざるを得ない。もっとも、2023年内は、ホリデー商戦における値引きセールや、株高を通じた資産効果による消費の下支えが期待できる点は安心感を与える。
◆一方、2024年に入れば、個人消費の主な下支え役は株式等のリスク資産の価格上昇による資産効果となる。ただし、資産効果に頼るのは不安が残る。株価は金利の変動に左右されやすく、金利はFRBの金融引き締めに対するスタンス次第といえる。期待インフレ率が上昇し、インフレの高止まり懸念が強まれば、FRB はタカ派的なスタンスを強めることになる。市場では早期利下げへの期待が高まる中、12月のFOMCで公表予定のドットチャートはタカ派的なサプライズを起こし得る。そして、2024年に入った後も引き締め的な金融環境が長く維持されれば、金融システムへの負荷はかかりやすくなる。そうなれば、株高による資産効果を期待するよりも、場合によっては株安による逆資産効果を懸念しなければならないかもしれない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日