サマリー
◆2023年10月31日・11月1日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが、従来の5.25-5.50%で据え置かれた。ウォラーFRB理事やパウエルFRB議長が、10月半ばの講演会で今後の金融政策運営に関して慎重に判断していくと繰り返し、今回のFOMCでの金利据え置きを示唆していたことから、市場参加者にとって想定通りの結果であった。
◆今回の金利据え置きの決定が既定路線だったこともあり、注目点は先行きの追加利上げの可能性であった。今回の声明文やパウエル議長による記者会見を踏まえれば、インフレがまだ2%の目標を達成できていない現時点で、追加利上げの可能性自体は否定されていない。しかし、追加利上げから距離を置くような文言が声明文や記者会見で散りばめられており、次回会合でも金利据え置きをベースシナリオとして想定しているようなハト派的な雰囲気が醸成されたといえる。
◆しかし、追加利上げを実施するか否かは最終的にデータ次第であると、パウエル議長は述べている。では、足下のハト派的なスタンスを取るパウエル議長を追加利上げ実施へと転換させるトリガーは何か。一つは景気全体の強さである。実質GDP成長率の伸び幅が、インフレ圧力を高めないとされる潜在成長率以下のペースに落ち着くかが追加利上げの可能性を左右するだろう。もう一つは、長期金利が持続的に高水準で推移するかである。タームプレミアムの上昇余地が徐々に限られていく中で、長期金利が持続的に高水準で推移しなければ、追加利上げの必要性が高まる点に注意が必要だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日