サマリー
◆バイデン次期大統領は、富裕層に対する課税と労働者への再分配の強化を政策として掲げている。具体的には、連邦所得税の最高税率をトランプ減税前に戻した(37%⇒39.6%への引上げ)上で、年100万ドル以上の所得がある者の長期キャピタルゲイン(保有期間1年超)に対しても最高税率(39.6%)を適用するとしている。もしこれがそのまま実現されれば、米国の長期キャピタルゲインに対する最高税率としては、1921年以来、約100年ぶりの高水準となる。
◆もっとも、バイデン次期大統領の政策が実行に移されるかは議会構成次第である。1月から始まる第117議会で民主党が上下院で多数派となれば、バイデン次期大統領が主張する税制改革の機運が高まる。一方、共和党が上院の過半数を維持しねじれ議会となった場合には、上院共和党の支持が得られなければ税制改革も実現困難となるだろう。
◆キャピタルゲイン課税の引上げについては、ロックイン効果が生じ株式取引の減少や投資の縮小をもたらし必ずしも大きな増収とならない可能性が指摘される一方、市場全体には大きな影響は及ぼさないといった見方もある。
◆富裕層にとってキャピタルゲインの(最高)税率が他の所得に係る最高税率よりも低い点は日米で共通している。一方、日本は米国と比べて株式譲渡所得の総額が少なく、かつ富裕層への偏在も相対的に小さいため、仮に米国と同様の増税を行ったとしても税収の増加は限定的と考えられる。今後の日本の金融所得課税のあり方にも影響を与え得るため、バイデン次期大統領の増税案の帰結につき注目すべきである。
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