サマリー
米国の1月賃金統計が世界の金融市場を震撼させた。ひとまずボラティリティのピークは越えたかにみえるが、その余波の終息には至っていない。実際のところ、1月の米国の「時給」の上昇は、労働時間の減少の「結果」にすぎない可能性が高く、これをトレンドの変化と見ることには慎重であるべきと考える。差し当たり、2月の賃金統計を確認する必要があろう。とはいえ、米国の労働市場のタイト化が進んでいること、先に決まった米国の税制改革が、適温を過熱に変えてしまう可能性があることなどを踏まえれば、仮に1月の「時給」の加速が異常値であったことが判明したとしても、それをもって賃金インフレへの警戒を解除することも適当ではない。またグローバル株価下落の直接の原因となった米国金利の上昇には、同国財政赤字の拡大見通しというもう一つの背景も存在するが、こちらは相当程度、既定路線と言ってよい。米国の税制改革が同国経済の短期的なアップサイド・リスク、そしてインフレ率や金利の想定以上の上昇を通じた長期的なダウンサイド・リスクの双方を高めているとすれば、金融市場のボラティリティは比較的高い状態が続く可能性がある。適温「経済」が今しばらくの賞味期限を残す一方で、適温「相場」は終わった可能性が高いとみるべきか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国経済見通し 統計水増しと質の高い発展
全人代の注目点は国家機構人事と政府成長率目標
2018年02月21日
-
欧州経済見通し 変化の時を迎えた金融政策
鍵を握るインフレ見通し
2018年02月21日
-
米国経済見通し インフレ加速リスクが台頭
ただし、インフレを受けた金融市場の変動は景気を抑制する要因に
2018年02月21日
-
日本経済見通し:2018年2月
17年度+1.7%,18年度+1.3%,19年度+0.8%/世界経済が抱える五つのリスク
2018年02月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
GENIUS法、銀行とステーブルコインの邂逅
ステーブルコインは支払決済手段として普及するのか?
2025年08月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日