サマリー
◆1月分の雇用統計公表以降、インフレ率の上振れに対する懸念が急速に高まっている。しかしFOMC参加者はこれまでも、労働市場の改善などを背景にインフレ率は中期的に2%に近づいていくという見通しを貫いてきた。また、2018年1月のFOMCの声明文においては、2%のインフレ目標達成への自信を深める表現が盛り込まれており、足下のインフレ指標の上振れは、そうしたFOMC参加者の見通しから大きく外れたものではない。
◆足下での賃金上昇率、インフレ率の上振れを受けて、金融市場では利上げ見通しの上方修正が意識され始めているが、現段階でFOMC参加者がそうした判断を下す可能性は高くないと考えられる。むしろ、インフレ率の上振れをきっかけとした株価の調整や、市場金利の上昇は、景気を抑制する要因として働くと考えられる。FOMC参加者は金融市場の変動が実体経済に及ぼす影響を見極める必要があるだろう。
◆トランプ大統領は2月12日に、2019会計年度の予算教書を議会に提出したが、これはあくまで議会に対する提案であり法的拘束力を持たない。2018年度、2019年度については、予算教書が公表された前の週の2月9日に、暫定予算の延長と同時に歳出上限を引き上げる予算関連法案が超党派での合意により可決されている。2019年度までは、予算教書で示された以上に、歳出が増加し、財政収支が悪化する可能性が高まっている。
◆米国経済は足下まで着実な成長が続いており、景気拡大が続く中での大型減税と歳出の拡大の組み合わせは異例の対応と言える。財政赤字の拡大による金利上昇リスクは高まっており、かえって景気拡大の寿命を短くする可能性には注意が必要であろう。
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