サマリー
◆ユーロ圏のGDP成長率は2017年10-12月期も前期比+0.6%と堅調を維持し、2017年通年では10年ぶりの高成長である+2.5%となった。個人消費に加え、輸出が景気拡大の牽引役として存在感を高めた。続く2018年のユーロ圏経済は、ECBの金融緩和の軌道修正を意識したユーロ高と金利上昇が幾分かの抑制要因になると予想されるが、内外の需要拡大を追い風に+2.2%成長が見込まれる。なお、原油価格の上昇や、ドイツ最大労組であるIGメタルが高めの賃上げ率を勝ち取るなど、今後のインフレ圧力となる材料が出てきたが、他方でユーロ高はインフレ抑制要因である。ユーロ圏の1月の消費者物価上昇率は前年比+1.3%とまだ低水準で、急速にインフレ圧力が高まる環境にはない。ECBは先々の利上げを念頭に置いているが、前のめりの利上げ期待とユーロ高、金利上昇は牽制しつつ、「非伝統的な金融緩和」の修正を徐々に進めると予想される。
◆英国のGDP成長率は、2017年10-12月期は前期比+0.5%と予想外に堅調で、2017年通年も+1.8%と2016年の+1.9%とほぼ同水準であった。個人消費はBrexit(英国のEU離脱)決定に伴うポンド安でインフレとなり、実質所得が目減りしたことで減速したが、一方でポンド安と世界景気拡大が追い風となった輸出が英国景気を下支えしている。英中銀(BOE)は2017年11月にインフレ懸念を理由に政策金利を0.25%から0.50%へ引き上げたが、この2月の金融政策理事会で従来想定より早目の追加利上げを示唆した。Brexitという不透明要因はあるが、景気が底堅く推移する中、1月の消費者物価上昇率はインフレターゲットの上限である前年比+3.0%にとどまった。BOEは労働需給の逼迫が賃金上昇率の加速につながると予想しており、政策金利は5月にも0.75%へ引き上げられる可能性が高い。
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