サマリー
◆日本経済中期予測を1年ぶりに改訂した。2026~35年度の実質GDP成長率は年率+0.8%と見込んでいる。予測期間前半は緩和的な財政・金融政策の下、家計の所得環境の改善や世界経済の堅調な推移などを受けて、個人消費や輸出、設備投資を中心に増加しよう。後半は、人口減少の加速や長期金利の上昇が経済成長の重しとなる一方、賃金上昇に伴う消費増などが下支えするとみている。CPI上昇率は同+2.1%の見込みで、日本銀行は2027年度にかけて短期金利を1.75%まで段階的に引き上げると想定している。国債需給の緩和などで長期金利は予測期間の終盤にかけて4%超まで上昇しよう。円高ドル安が進行し、予測期間後半で111円/ドル台と見込んでいる。
◆国と地方のプライマリーバランス(PB)は、予測期間を通してGDP比▲2.5~▲1.7%程度で推移すると見込んでいる。ただし、消費減税や防衛費の増額などが実施されれば、PB赤字は想定よりも大幅に拡大する。また、長期金利上昇の影響により純利払い費が増加し、2024年度に同▲2.5%だった財政収支は2035年度に同▲6.0%に悪化する見込みだ。公債等残高対GDP比は2030年代初めまで低下が続くが、その後は名目実効金利が遅れて上昇することやPB赤字の拡大により、上昇に転じるだろう。
◆高市早苗政権は2026年の骨太方針で新たな財政目標を示す方針だ。複数年で均したPBが赤字であっても許容したり、歳出目標を撤廃したりする可能性があるが、そうなれば債務残高対GDP比のみを目標に掲げる形になり、主要20カ国の中で財政運営の規律付けが最も弱い国になる。景気や金利の影響を受ける債務残高対GDP比を政府が管理することは難しい。潜在成長率が加速しない場合にも備えつつ、大災害や経済危機が起きた際に財政支出を円滑に拡大できるよう、PB黒字化目標を引き続き堅持すべきだ。また、仮に政府がPB黒字化目標を取り下げるのであれば、他の主要国を参考に、財政健全化の実効性を担保する仕組みが必要になるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2026年7月号(No.476)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2026年06月24日
-
地政学的緊張が促すAI開発競争
2026年06月24日
-
日本経済見通し:2026年6月
覚書後の中東情勢の影響とAI需要の下支え/消費減税と所得連動給付
2026年06月23日
最新のレポート・コラム
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
米国:AI関連投資の持続性を左右する3つの要因
①ハイパースケーラーの収益化志向、②「循環資金」が内包するリスク、③レバレッジ型ETFによる変動拡大
2026年07月09日
-
2026年3月期有報の人的資本開示①
既存欄と新設欄(人材戦略に関する基本方針等)の情報分散に課題
2026年07月07日
-
不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(TISFD)の第一草案を読む
「社会(S)」情報開示の新たな展開が日本企業に示唆すること
2026年07月07日
-
一段と進む円安 — 日米金利差との連動性低下が示すドル円相場の新局面
2026年07月08日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

