サマリー
◆9月の中国人訪日客数は回復基調が継続した。東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出を受けた日中関係悪化の影響は限定的だったようだ。中国人以外の訪日客数が季節調整値で9月に過去最多を更新したことや、円安の進行などを踏まえ、訪日外客数の見通しを上方修正した。23年は2,500万人、24年は3,620万人と見込んでいる。
◆インバウンド需要が含まれるサービス輸出は堅調な一方、財輸出は伸び悩んでいる。実質輸出を財別に見ると、半導体不足の緩和で挽回生産が本格化した自動車関連財が輸出全体を押し上げる一方、その他の財は総じて低調だ。先行きの実質輸出は海外景気の持ち直しやシリコンサイクルの回復局面入りなどもあって緩やかな増加を見込んでいるが、中東情勢の緊迫化や中国の不動産不況など海外経済の動きには注意が必要だ。
◆足元の経済指標の動きを踏まえ、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率▲0.5%と暫定的に見込んでいる。9月8日時点では同▲0.3%と予想していたが、輸出などを上方修正した一方で個人消費を大きく下方修正したことから、実質GDP成長率のマイナス幅は従来予想からわずかに拡大した。10月末に公表するGDP1次速報予想レポートで改めて示す予定である。
◆日本の輸出の世界シェアは過去20年間で半減するなど厳しい競争環境にさらされており、輸出競争力強化の重要性が増している。背景には、国際競争力の高い製品の国内生産が減少したことや、日本が他国製品にシェアを奪われやすい産業構造であること、近年は製品の品質面で他国に追いつかれつつあることなどがある。企業が投資の成果をきちんと再評価して効果的な投資を進めたり、産官学の連携によって技術開発のマネタイズを促したりするといった取り組みが肝要だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2023年9月
処理水問題の影響は限定的か/「最低賃金1,500円」目標達成の課題
2023年09月21日
-
日本経済見通し:2023年1月
急回復するインバウンドと関心が高まる金融政策の先行き
2023年01月23日
-
日本経済見通し:2022年1月
21年度の経済成長率を+2.4%に下方修正/円安は経済にマイナス?
2022年01月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2025年5月号(No.462)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年04月24日
-
「相互関税」騒動と日本の選択
2025年04月24日
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日