サマリー
◆2022年10-12月期の財輸出は米欧中の景気悪化を受けて減少した一方、サービス輸出に含まれるインバウンド消費は急回復した。2023年の実質インバウンド消費は訪日中国人が春頃から本格回復するとの想定の下、前年から3兆円ほど増加する見込みだ。円高と世界同時不況が発生しても、インバウンドの回復が2023年の日本経済の大きな下支え要因になるという姿は変わらないだろう。
◆日本銀行(日銀)は2023年1月の金融政策決定会合で政策の現状維持を決定した。大規模緩和策の先行きを占う上では、当面は米国景気や春闘の結果などが注目される。2022年春闘で2%程度だった賃上げ率は2023年に3%台に乗せる可能性がある。米国景気の落ち込みが深刻なものでなければ、日銀は早ければ2023年7月の展望レポートで物価見通しを引き上げ、金融政策の「点検」の結果を公表しつつ、長短金利操作の終了など大規模緩和策の転換に踏み切る可能性も否定できない。この場合でも、国債などの購入や低金利の維持などを通じて、金融緩和そのものは継続するとみられる。
◆デフレ脱却や2%の物価安定目標の達成後は、インフレを安定させつつ、財政・金融政策の正常化を進めるという難しい課題が待ち受けている。ほぼ10年前の2013年1月に政府・日銀は共同声明を出したが、これに盛り込まれた成長力強化や財政健全化は期待された成果を上げることはできなかった。デフレ脱却が現実味を帯びつつある中、労働生産性の上昇に裏付けられた実質賃金の引き上げや出生率の向上、国・地方のプライマリーバランス黒字化などでは、これまで以上に成果が求められる。
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