2023年の日本経済見通し

実質GDP成長率は+2%程度を見込むもののマイナスに転じることも

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2022年12月21日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉

サマリー

◆2022年は歴史的な高インフレが発生し、欧米など多くの国・地域では厳しい金融引き締めを余儀なくされた。また、ロシアのウクライナ侵攻で資源価格が高騰し、一部の新興国では食糧危機が発生した。中国では厳しいロックダウン(都市封鎖)が同国の経済活動を大幅に抑制しただけでなく、グローバルサプライチェーンの混乱ももたらした。日本も主要国と同様に2022年の経済成長率が低下するとみられる。国内の経済正常化の遅れや半導体不足による自動車減産、資源高と円安による海外への所得流出などにより経済活動の停滞感が強かった。

◆当社のメインシナリオでは、2023年の日本の実質GDP成長率を前年比+1.9%と見込んでいる。サービス消費・インバウンド(訪日外客)・自動車生産を中心に回復余地が大きいことに加え、緩和的な財政・金融政策が継続するとみられる。また、約55兆円の「過剰貯蓄」と経済対策が物価高の悪影響を緩和するだろう。約40年ぶりの高インフレや人手不足などを背景に、2023年の春闘では賃金改定率が大幅に上昇する可能性がある。日本銀行は2022年12月の金融政策決定会合で長期金利の変動幅の拡大などを決定したが、賃金と物価の循環的な上昇を明確に確認するまでは長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を維持するとみている。

◆2023年の日本の実質GDP成長率見通しは上振れよりも下振れ余地が圧倒的に大きい。最大の下振れリスクは米国の深刻な景気後退入りである。米国で失業率が10%近くまで上昇すれば、日本はマイナス成長に転じることになる。さらに、ユーロ圏での金融機関のレバレッジの大幅な縮小や、中国での複数の大都市のロックダウンと不動産市場の大幅な縮小、国内の経済正常化の遅れ、自動車向け半導体不足の長期化が加われば、日本の実質GDP成長率は同▲4%台まで悪化するとみられる。

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