サマリー
◆製造業を中心とした世界経済の減速を背景として、外需寄与がマイナスに転じる中、日本経済の成長を支えてきたのは内需であった。しかし、絶好調だった2019年度上半期の内需成長の少なくとも一部には、消費税増税前の駆け込み需要が含まれている。その反動と、増税に伴う負の所得効果、そして雇用・所得の改善速度鈍化などを背景に、消費を中心とした内需の成長寄与度は縮小へと向かう公算が大きい。もっとも、増税の影響は一時的なものである。また、今般編成された経済対策が内需を一定程度は下支えする効果も見込まれる中、内需寄与度のマイナス転換は回避される見通しだ。
◆とはいえ、日本経済が再び減速から加速へと転換するためには、増税の影響が一巡する、あるいは、外需の成長寄与度が明確なプラスに転じる必要がある。このうち外需には、アジアを中心とした半導体需要の回復やグローバルな在庫調整の一巡、米中通商交渉の「一次合意」など、明るい兆しも見られ始めている。しかし軍事やイデオロギーなど、合意が難しい次元において米中の対立が再び先鋭化するリスクや、グローバルな稼働率の低さを背景に先進国を中心として資本財・耐久財需要が遅れて減退に転じていることなどを踏まえると、外需が本格的な回復に転換するまでには未だ幾許かの時間を要する公算が大きい。これらを踏まえ、日本経済の成長率は2020年前年比+0.3%、2020年度前年度比+0.5%へと緩やかに減速すると予測する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
「駆け込み需要」の徹底検証(業種別・品目別)
対策のエアポケットとなった分野で顕著に発生。今後は反動に要警戒。
2019年10月30日
-
徹底検証:消費増税と対策の影響分析
所得効果・代替効果と世代別影響・産業別影響を網羅的に精査
2019年09月18日
-
日本経済見通し:2019年6月
外需成長なくして内需回復なし
2019年06月20日
-
日本経済見通し:2019年8月
Ⅰ.駆け込み出荷でGDPは絶好調という統計トリック、Ⅱ.消費増税と教育無償化で損する世代と得する世代、Ⅲ.経済見通しを改訂:19年度+0.9%、20年度+0.4%、Ⅳ.米中交渉、再度決裂。残り3,000億ドルに10%の追加関税へ
2019年08月16日
-
「罰則付き残業規制」で働き方は変わったのか
着実に進む長時間労働の是正。しかし未だ153~316万人が新基準に抵触の恐れ
2019年10月03日
-
日本経済見通し:2019年11月
減速の主因は外需から内需へ
2019年11月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2025年8月号(No.465)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年07月23日
-
回復感なき経済成長は続くのか
2025年07月23日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
-
金利上昇下における預金基盤の重要性の高まり
~預金を制するものは金融業界を制す~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
企業の賃金設定行動の整理と先行きへの示唆
~生産性に応じた賃金決定の傾向が強まる可能性~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
「外国人優遇」は本当か?データで見る国民健康保険・国民年金の実態
2025年07月25日
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日