日本経済見通し:2019年8月

Ⅰ.駆け込み出荷でGDPは絶好調という統計トリック、Ⅱ.消費増税と教育無償化で損する世代と得する世代、Ⅲ.経済見通しを改訂:19年度+0.9%、20年度+0.4%、Ⅳ.米中交渉、再度決裂。残り3,000億ドルに10%の追加関税へ

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2019年08月16日

  • 小林 俊介
  • 鈴木 雄大郎

サマリー

◆【駆け込み出荷でGDPは絶好調という統計トリック】消費税増税前の駆け込み需要は、現時点で家計購入ベースでは確認されない。しかし駆け込み需要の発現を見越したものとみられる、言わば「駆け込み出荷」が発生している。特に、自動車の駆け込み出荷は、4-6月期のGDPをも大きく押し上げた。自動車以外でも、「家電」「パルプ・紙・紙加工品工業」「化学工業」、そして「住宅」部門で駆け込み出荷(着工)が顕在化している。これらが成長を押し上げる効果は増税以降に剥落し、反動減に転じていく公算が大きい。

◆【消費増税と教育無償化で損する世代と得する世代】消費税率の引き上げ等による負担増と、教育無償化等の受益増を相殺すると、ネットベースでの財政緊縮効果は2.0兆円程度と試算される。しかし一連の措置により、「29歳以下」と「30~39歳」の二人以上世帯では負担増よりも受益増が大きくなる見込みだ。他方、「50歳以上の二人以上世帯」および「単身世帯」では相対的に負担が大きくなる。こうした世代間の影響のばらつきは、品目別に見た消費動向にも影響を与えそうだ。

◆【経済見通しを改訂:19年度+0.9%、20年度+0.4%】4-6月期のGDP発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の見通しは2019年度が前年度比+0.9%、2020年度が同+0.4%である。先行きの日本経済は、駆け込み需要が発生し得る2019年7-9月期までプラス成長が続いたのち、①世界経済の減速に伴う輸出低迷、②在庫調整、③稼働率の低下を受けた設備投資の伸び鈍化、④雇用増加ペース鈍化に伴う消費足踏み、⑤消費税増税を背景に、潜在成長率を若干下回る低空飛行を当面続ける公算が大きい。

◆【米中交渉、再度決裂。残り3,000億ドルに10%の追加関税へ】トランプ米国大統領は中国からの輸入品約3,000億ドルに対して10%の追加関税を賦課することを宣言した。マクロモデルを用いて推計すると、今回の措置に伴う打撃は中国▲0.05%pt、米国▲0.11%pt、日本▲0.04%ptとなる。加えて今回の措置は①対象品目に含まれる消費財のウェイトが大きく、②中国以外からの代替輸入が難しいことから、米国の消費者への影響が相対的に大きくなる点に注意が必要だ。

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