日本経済見通し:2019年11月
減速の主因は外需から内需へ
サマリー
◆2019年7-9月期のGDP発表を受け、経済見通しを改訂した。改訂後の見通しは従来通り2019年度が前年度比+0.8%、2020年度が同+0.4%である。先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を、当面続ける公算が大きい。ただし、減速の主因は外需から内需へ転換する見込みだ。過去1年程度を振り返ると、日本経済の成長を支えてきたのは専ら内需であり、外需は停滞を続けてきた。しかし、「外需の不振を堅調な内需が相殺する」構図は、転換点を迎えつつある可能性がある。
◆まず、2018年の早い段階から2年近く減少傾向を続けてきたアジア向け輸出・電気機器輸出が、直近では下げ止まり、緩やかな回復に転じている。もちろん、こうした動きだけをもって輸出全体が本格的な回復局面に入ることを期待するのは難しい。第一に、アジア向け輸出・電気機器輸出が回復を続けるためには米中間での関税引き上げ競争が再燃しないことが前提となる。第二に、アジア向け・電気機器輸出に遅れる形で、先進国向け輸出・一般機械/輸送用機器輸出が調整色を強めている。従って、「輸出全体が力強く回復に向かう」というよりも、仕向け先・業種別に見た好不調が入れ替わりながら、「輸出全体として底割れは回避される」との見通しが妥当だろう。
◆先行きの日本経済にとってはむしろ、内需による景気下支え効果が弱まることが懸念される。第一に、短期的には、駆け込み需要の反動が発生する。第二に、中期的には消費増税に伴う負の所得効果が発現する。また、前回増税時の教訓として、増税後には節約志向が強まりやすいという事実も見逃せない。第三に、製造業を中心とした企業収益の成長鈍化が、遅行して雇用・所得の改善ペースを鈍らせている点にも留意が必要だろう。加えて、2019年度から導入されている「罰則付き残業規制」への対応が、2020年度にかけて労働投入の抑制要因となる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2019年11月14日
2019年7-9月期GDP一次速報
駆け込み需要を在庫減少と外需の停滞が相殺し、薄氷の4四半期連続プラス成長
-
2019年08月09日
2019年4-6月期GDP一次速報
3四半期連続プラス成長。内需好調で市場予想の上限値を上回る年率+1.8%
-
2019年10月23日
日本経済見通し:2019年10月
消費税増税に伴う駆け込み需要と反動は回避されたのか?
-
2019年10月30日
「駆け込み需要」の徹底検証(業種別・品目別)
対策のエアポケットとなった分野で顕著に発生。今後は反動に要警戒。
-
2019年09月18日
徹底検証:消費増税と対策の影響分析
所得効果・代替効果と世代別影響・産業別影響を網羅的に精査
-
2019年08月16日
日本経済見通し:2019年8月
Ⅰ.駆け込み出荷でGDPは絶好調という統計トリック、Ⅱ.消費増税と教育無償化で損する世代と得する世代、Ⅲ.経済見通しを改訂:19年度+0.9%、20年度+0.4%、Ⅳ.米中交渉、再度決裂。残り3,000億ドルに10%の追加関税へ
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月20日
日本経済見通し:2021年1月
1-3月期は小幅な景気悪化を見込むも「二番底」リスクを排除できず
-
2021年01月20日
日本経済中期予測(2021年1月)解説資料
~コロナ禍で変容する世界経済と加速するグリーン化の取組~
-
2021年01月20日
日本経済中期予測(2021年1月)
コロナ禍で変容する世界経済と加速するグリーン化の取組
-
2021年01月20日
中国:V字回復下の中国経済の注目点
感染第2波は回避へ。注目される接触型消費の完全復活の成否
-
2021年01月20日
新たな科学技術・イノベーション政策への期待
よく読まれているリサーチレポート
-
2020年12月17日
2021年の日本経済見通し
+2%超の成長を見込むも感染状況次第で上下に大きく振れる可能性
-
2020年12月01日
2020年10月雇用統計
有効求人倍率が1年半ぶりに上昇
-
2020年11月20日
日本経済見通し:2020年11月
経済見通しを改訂/景気回復が続くも、感染爆発懸念は強まる
-
2020年08月14日
来春に改訂されるCGコードの論点
東証再編時における市場選択の観点からも要注目
-
2020年10月15日
緊急事態宣言解除後の地域別観光動向/Go To トラベルキャンペーンのインパクト試算
ローカルツーリズムが回復に寄与するも、依然厳しい状況が続く