「罰則付き残業規制」で働き方は変わったのか

着実に進む長時間労働の是正。しかし未だ153~316万人が新基準に抵触の恐れ

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2019年10月03日

  • 小林 俊介
  • 鈴木 雄大郎

サマリー

◆「罰則付き残業規制」が2019年4月に施行されて以来、半年が経過した。同政策では、月間100時間以上の残業、もしくは年間960時間以上の残業が罰則の対象となっている。本稿では、規制前後で日本企業の対応がどの程度進展しているのかを確認する。

◆年度データとしては最新となる2018年度の数値を確認すると、規制対象業種において年間960時間以上の残業を行った疑いのある就業者数は316万人であった。より最新のデータとなる2019年8月のデータを用いて確認すると、153万人が月間100時間以上の残業を行っている。この153万人、ないしは316万人の長時間労働を、大企業は2019年度内に、中小企業は2020年度内に解消する必要がある。

◆長時間労働の是正に伴い、削減される労働時間の経済的インパクトを試算すると、最大で年間約11.3億時間の労働時間が圧縮されることになる。これは約60万人(総就業者数の約0.9%)の労働時間に相当する規模だ。

◆現時点で規制対応は不十分ではあるものの、長時間労働是正の機運が高まった2015年度以降、日本企業は総労働投入時間を増加させながらも、3年間で51万人の超長時間労働を解消している。その主な対策は短時間労働者の増員とワークシェアリングであり、主な対象は学生、高齢者、女性であった。しかしこうした対応にもいずれ限界が訪れる。今後同様の対策を続ける上では、シニア層(再雇用)、非労化した人材(就職氷河期世代)、外国人労働者などの取り込みが必要となりそうだ。

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