サマリー
◆10月に始まった消費税増税が消費を腰折れさせる可能性は、極めて限定的であるとの見通しが多い。その理由は①消費の基調が底堅い、②各種平準化策により駆け込み需要と反動は抑制された、③軽減税率の導入や教育無償化の影響を合わせれば負の所得効果が小さいといったものだ。しかし近日報道されているとおり、想定外の駆け込み需要が発生していたならば、②は当然ながら、①についてもその妥当性は揺らぐ。
◆この問題意識を起点として、本稿では現在入手可能なデータを用いて、今回の駆け込み需要に関して二つの事実を確認した。第一に過去の消費増税時に比べて駆け込み需要の規模は抑制されている。食品等を対象とした軽減税率の導入に加え、自動車税の減免やキャッシュレス決済へのポイント還元などの需要平準化策が奏功したようだ。
◆しかし第二の事実として、今回も一部の分野で顕著な駆け込み需要が確認されている。とりわけ、対策のエアポケットとなった分野で駆け込み需要が顕著に発生したようだ。自動車では普通車と軽自動車、住宅では持家と分譲、小売店では百貨店、家電量販店、およびドラッグストアにおいて増税直前期の需要が大幅に伸長している。
◆今後は駆け込み需要の反動とともに、駆け込み需要の発現を見越した「駆け込み出荷」の反動にも警戒しなければならない。特に家電、パルプ・紙・紙加工品工業、化学工業といった業種における「駆け込み出荷」が成長を押し上げた効果は今後剥落し、反動減に転じていく公算が大きい。
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