デジタル時代で変容を迫られる公的統計

回収率低下やニーズ拡大を受けて大きな曲がり角に

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2025年03月27日

サマリー

◆2025年は5年に1度の国勢調査が実施される年である。こうした公的統計は経済社会の実態を把握する上で重要な公共財であるものの、最近は回答負担の重さから統計調査全体の回収率の低下が世界的に大きな問題となっており、日本も例外ではない。回収率の低下は統計精度の問題に直結するため、その対策を講じることは喫緊の課題である。

◆さらに最近では、デジタル時代の要請を受けて、公的統計に求められる役割も変容している。速報性・詳細性・網羅性といったニーズの拡大に応えるべく、ビッグデータの活用が模索されている。しかし、予算制約など依然として多くの課題が残されており、ビッグデータの活用が急速に広がっているという印象はない。

◆回収率の低下に対しては、例えばオンライン回答の実施やビッグデータの活用による調査負担の軽減が挙げられており、特に後者は行政機関における日々の業務で収集される行政記録情報の活用が期待されている。ニーズの拡大に対しては、物価統計でのビッグデータの活用など、比較的扱いやすい領域を中心に今後も広がることが予想される。

◆まもなく結果が公表される最新の国民経済計算(2025SNA)に向けた基準改定では、デジタル経済の実態を従来のSNAと整合的な形で把握できるようになる。しかし、実際の統計に反映されるまでには数年程度の時間を要するだろう。こうしたビッグデータ等の活用や2025SNAによるデジタル経済の実態把握の試みを通じて、2025年はデジタル時代での公的統計の変容を感じる年となりそうだ。

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