サマリー
◆本稿は、「財政運営の分岐点」シリーズレポートの第3弾(全3回)として、財政状況が悪化した場合に生じ得るリスクの評価を行う。
◆日本の財政状況が悪化し、持続可能性への疑念が強まれば、日本国債に対する格付けが引き下げられるリスクがある。こうした状況に陥った場合に、「ソブリン・シーリング」によって日本の金融機関の格付けも連動して引き下げられる可能性には留意が必要だ。
◆格下げがその後1年間のGDPギャップに与える影響をパネル分位点回帰モデルによって試算すると、通常はGDPギャップを1%pt程度押し下げるが、25%の確率で1.5%pt押し下げるとみられる。
◆より深刻なリスクとしては、財政危機の発生が考えられる。当社の試算では、国の属性(先進国または新興国のいずれに属するか)や公的債務残高対GDP比、対外公的債務残高対GDP比といった要因が危機発生確率に大きな影響を与える。
◆日本にこのモデルを当てはめると、公的債務残高対GDP比が危機発生確率を大幅に高めている一方、先進国という属性や対外公的債務残高対GDP比の低さが危機発生確率を低下させている。ただし、今後は財政健全化の取り組みを進めなければ、国債の増発によって、公的債務残高対GDP比が一段と高まるだけでなく、海外投資家の保有比率の高まりで対外公的債務残高対GDP比も大幅に上昇する結果、2040年で危機発生確率は75%程度まで高まり得る。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
第226回日本経済予測
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年08月21日
-
世界に広がる政府債務拡大の潮流と経済への影響
大規模経済圏を中心に政府債務対GDP比は閾値の98%超で財政拡張効果は今後一段と低下へ
2025年10月06日
-
日本財政の論点 – PB赤字と政府債務対GDP比低下両立の持続性
インフレ状態への移行に伴う一時的な両立であり、その持続性は低い
2025年10月06日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年9月全国消費者物価
政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる
2025年10月24日
-
2025年9月貿易統計
トランプ関税の悪影響続くも、円安効果で輸出金額は5カ月ぶり増加
2025年10月22日
-
2025年8月機械受注
非製造業(船電除く)を中心に弱含み、政府は基調判断を下方修正
2025年10月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

