サマリー
◆「AI時代の日本の人的資本形成」と題する本レポートシリーズでは、3回に分けて、AI時代の到来と日本型雇用の変容という新たな局面において、いかにして人的資本を形成し、変化の波を乗りこなしていくべきかという論点に対し、具体的な戦略的視座およびアクションプランを提示する。
◆第1回目の本レポートは、「個人」に焦点を当て、主体的なキャリア設計と人的資本形成のための戦略的視座とアクションプランをまとめている。具体的には、AIとの関係性、AIを活用した学習戦略、ライフステージ別の実践ポイントを論じる。
◆AIが個人に与える影響は一様ではない。そのため、個人は自身の状況を「AI共存・活用層」、「AI代替リスク層」、「AI影響軽微層」のいずれかに位置づけ、戦略的に対応する必要がある。AI共存・活用層はAIを戦略的パートナーとし人間固有の価値向上を目指すことが求められる。AI代替リスク層はスキル棚卸とポータブルスキルを核とした段階的スキルシフトを図るべきである。AI影響軽微層も技術の非連続的進歩を念頭に、将来への備えと周辺業務の効率化を怠ってはならない。
◆生成AIは個人の学習を加速する強力なツールとなり得るが、ハルシネーション(AIが事実に基づかない情報を生成する現象)等のリスクを理解し、批判的思考を持って、賢く活用するリテラシーが不可欠である。同時に、基礎的な認知能力を土台としつつも、AIが容易には模倣できない人間ならではの能力である「高次スキル」や、学び方そのものを学ぶ能力である「メタ認知スキル」の強化が一層必要である。さらに他者との協調的な学びを促す学習コミュニティへの参加は、学びの深化と人的ネットワーク形成に寄与する。
◆ライフステージ別では、学生はAIネイティブとしての基盤構築と主体的な探求、若手・中堅層は専門深化とキャリア複線化による変化適応力の向上、ベテラン層は経験資本とAIの融合による独自の価値創出が求められる。変化を好機と捉え、キャリア自律の姿勢で継続的に学び続けることが、未来を切り拓く鍵となる。
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