サマリー
◆日本経済の成長を妨げている要因は、需要不足から供給制約に移行しつつある。今後も少子高齢化が進行するとみられる中、日本経済の供給力の底上げには、①国内労働供給の強化、②外国人労働者受け入れ拡大、③労働生産性の向上が必要だ。
◆国内労働供給は1人あたり労働時間の短縮などを背景に中長期的に減少してきた。働き方改革の進展などにより、足元ではすでに、1人あたり労働時間は延びにくい状況にあるとみられる。長時間労働が是正されることで、多様な人材の就業が拡大していく可能性はあるものの、そうした効果を加味しても、国内労働供給は2040年度にかけて年率▲0.4~▲0.1%のペースで減少が続くと試算される。
◆外国人労働者を年間27万人受け入れることで、労働投入量の減少を年率▲0.1%に抑えることもできるが、それは現状の2倍近い受け入れとなる。実現するには、留学生の就職支援強化やビザ要件の緩和など更なる施策が必要だろう。
◆労働生産性は、人的資本投資の拡大により労働の質が向上すれば年率0.2~0.3%pt程度、実質設備投資が5~7割程度増加すれば同0.1~0.2%pt程度上昇し得ると試算される。政府には国内外の労働力をできるだけ活用しつつも、人的資本投資の促進や対内直接投資の推進、設備投資目標と連動した輸出支援など、労働生産性の向上に向けた不断の取り組みを進めていくことが求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
第224回日本経済予測
米国の方針転換で問われる日本経済の成長力①国内供給力の底上げ、②「トランプ2.0」の影響、を検証
2025年02月21日
-
日本経済見通し:2025年1月
2025~34年度における経済財政・金利・為替レートの中期見通し
2025年01月24日
-
資本ストックの「量」「質」「偏在」の改善と省人化投資で供給力強化を
費用対効果の高い設備投資とそのインパクト
2023年11月28日
同じカテゴリの最新レポート
-
消費データブック(2025/5/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年05月02日
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
-
2025年3月鉱工業生産
自動車工業や電気・情報通信機械工業など10業種が前月から低下
2025年04月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日