サマリー
◆日本経済中期予測を1年ぶりに改訂した。2025~34年度の実質GDP成長率は年率+1.0%と見込んでいる。予測期間前半は緩和的な財政・金融政策の下、家計の所得環境の改善や世界経済の堅調な推移などを背景に、個人消費や輸出、設備投資を中心に増加しよう。後半では、国内の人口減少や世界経済成長率の低下が内外需の重しとなり、実質GDP成長率は同+0.8%へと低下するだろう。CPI上昇率は同+2.1%の見込みで、日本銀行(日銀)は2027年度にかけて短期金利を1.75%まで段階的に引き上げると想定している。円高ドル安が進行し、2030年代前半に100円/ドル台後半で推移するだろう。
◆日本の労働生産性は欧州主要国並みに上昇してきた一方、1人あたりで見た実質賃金は1990年代半ばから下落基調が続き、両者は「ワニの口」のように乖離した。その要因を整理すると、交易条件の悪化や企業の社会保険料負担の増加、1人あたり労働時間の減少などがあった。過去20年間において米国やドイツと比べると、日本では交易条件要因と企業の保険料負担要因が実質賃金の伸びを押し下げ(米独ではいずれも押し上げ)、労働時間要因の押し下げ幅は米独のそれを上回った。今後も労働時間要因は実質賃金の伸びを抑えるとみられるが、生産性上昇率の加速や交易条件の改善もあり、実質賃金は緩やかながらも上昇基調に転じる見込みだ。
◆国と地方のプライマリーバランス(PB)は予測期間を通して名目GDP比▲3~▲2%程度で推移する見込みであり、2025年度のPB黒字化目標の達成はかなり厳しいだろう。主因は歳出側にあり、常態化した大型の補正予算編成からの脱却などの歳出抑制がPBの黒字化には不可欠だ。一方、公債等残高対名目GDP比は2030年代初めまで低下が続くと見込んでいる。当面の間は「ドーマー条件」が成立する(経済成長率が実効金利を上回る)ためだが、インフレ下で長期金利が上昇することでいずれ成立しにくくなる。金融政策の正常化で日銀の国債保有残高が大幅に減少し、海外投資家の保有比率が高まれば、中長期的には長期金利に2~4%pt程度の上昇圧力がかかる可能性がある。
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