サマリー
◆3.3兆円規模の定額減税が2024年6月から翌年5月まで実施される。9割近くを占めるとみられる給与所得者への減税額を年収階級・実施月別に試算すると、定額減税の大部分は7月までに実施される(6月:1.7兆円程度、7月:0.6兆円程度)。8月から12月までの減税額は月あたり0.1兆円前後にとどまり、「夏の賞与支給時期の一斉給付」に近い形になるだろう。
◆定額減税の減税額と、政策・制度要因によるエネルギー代の増加額(2024年6月から1年間)を世帯属性別に試算すると、幅広い世帯で減税額がエネルギー代の増加額を上回る。とりわけ減税の恩恵が大きいのは、所得水準が比較的低く、子育て世帯を中心とした世帯人員の多い世帯だ。一方、恩恵が比較的小さいのは単身世帯や高所得世帯である。
◆減税・給付時の限界消費性向を0.1~0.3程度と推計した先行研究が多いことに加え、今回の定額減税では、①限界消費性向の高い低所得世帯が対象外、②所得弾性値の低い(あるいは不明確な)賞与の手取り額が定額減税で押し上げられる世帯が多い、③コロナ禍以降にマクロで見た限界消費性向が低下した可能性、といった点も指摘できる。これらを踏まえると、定額減税のGDP押し上げ効果は0.2~0.5兆円程度と試算される。定額減税は生活の安定には資するものの、消費喚起効果は慎重にみるべきだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年11月貿易統計
主力の米国向け自動車の輸出が急回復し、貿易収支は黒字に転換
2025年12月17日
-
2025年10月機械受注
民需(船電除く)は2カ月連続で増加、基調判断は上方修正
2025年12月17日
-
音声生成AIが生み出す“声”の新たな価値
AIによって生成された自分の声の権利をどのように守るべきか
2025年12月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

