定額減税は所得下支え効果が大きいものの経済効果は0.2~0.5兆円程度か

一斉給付に近い形になり、減税額はエネルギー代の増加額を上回る

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2024年06月14日

サマリー

◆3.3兆円規模の定額減税が2024年6月から翌年5月まで実施される。9割近くを占めるとみられる給与所得者への減税額を年収階級・実施月別に試算すると、定額減税の大部分は7月までに実施される(6月:1.7兆円程度、7月:0.6兆円程度)。8月から12月までの減税額は月あたり0.1兆円前後にとどまり、「夏の賞与支給時期の一斉給付」に近い形になるだろう。

◆定額減税の減税額と、政策・制度要因によるエネルギー代の増加額(2024年6月から1年間)を世帯属性別に試算すると、幅広い世帯で減税額がエネルギー代の増加額を上回る。とりわけ減税の恩恵が大きいのは、所得水準が比較的低く、子育て世帯を中心とした世帯人員の多い世帯だ。一方、恩恵が比較的小さいのは単身世帯や高所得世帯である。

◆減税・給付時の限界消費性向を0.1~0.3程度と推計した先行研究が多いことに加え、今回の定額減税では、①限界消費性向の高い低所得世帯が対象外、②所得弾性値の低い(あるいは不明確な)賞与の手取り額が定額減税で押し上げられる世帯が多い、③コロナ禍以降にマクロで見た限界消費性向が低下した可能性、といった点も指摘できる。これらを踏まえると、定額減税のGDP押し上げ効果は0.2~0.5兆円程度と試算される。定額減税は生活の安定には資するものの、消費喚起効果は慎重にみるべきだ。

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