サマリー
米国のシリコンバレーバンクの突然の経営破綻をきっかけに、ここ1年余りの米欧の急速な利上げが金融システム不安を引き起こすことへの懸念が一気に高まった。米当局は破綻銀行の預金の全額保護、銀行への流動性供給プログラムの創設などを矢継ぎ早に打ち出し、また日米欧など6中銀によるドル供給強化の方針も発表された。一方、ECBは3月16日に0.5%pt、FRBは3月22日に0.25%ptの利上げをそれぞれ発表し、金融政策ではインフレ抑制を重視する姿勢が示された。ECB、FRBとも金融システム不安の拡散は大いに警戒しつつも、現状は個別銀行の特殊ケースで、金融政策の方針を見直すべき事態には至っていないとの判断である。米国もユーロ圏もインフレ率はピークアウトしたものの高水準にとどまっており、現時点では妥当な判断と考えられる。ただし、金融システム不安が解消されるまでには時間を要すると見込まれ、その間、銀行の貸出姿勢の厳格化、企業の投資意欲や家計の消費意欲の後退などの影響が世界経済に及ぶことが予想される。短期的な市場へのインパクトに加え、このような中長期的なインパクトにも目配りが必要となった中、米欧の利上げ停止時期が早まる可能性が出てきた。
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