サマリー
◆2023年春闘の賃上げ率は30年ぶりの高水準となる可能性が高まった。日本労働組合総連合会(連合)が3月17日に公表した第1回回答集計結果によると、定期昇給込みの賃上げ率は3.80%で、1993年以来の高い水準であった。中小企業を含めてベースアップ(ベア)率が大幅に引き上げられ、非正規雇用者の賃上げ額も例年を大きく上回った。
◆仮に、今春の大幅ベアによって所定内給与が前年比1.5%pt高まると、実質賃金の前年比変化率は2023年度前半にプラスとなる。ただし賃金面からの物価上昇圧力が高まることで、2024年1-3月期には再びマイナスに転じるとみられる。そうなれば、2024年春闘では前年に続いて「物価高に負けない賃上げ」を求める声が高まり、賃上げ率は高水準を維持する可能性がある。
◆2022年は資源高の中でもマクロで見た企業収益は好調だった。背景を探るため、付加価値額の動きを「マージン」と「数量」の2つの要因に分けて整理した。製造業の加工業種では、主にマージン要因によって付加価値額が増加した業種が多く、その傾向は情報通信機器や電子部品などで顕著であった。反対に非製造業では、電力・ガス・熱供給を中心にマージンが悪化し、付加価値額が減少した。好調な業種でも、2022年に増収減益となった中小企業は多い。今後は大幅な賃上げによる人件費の増加も見込まれる。幅広い企業の収益拡大と高水準の賃上げを両立させるためにも、円滑に価格転嫁できる環境の整備が引き続き重要だ。
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