サマリー
◆ユーロ圏の2022年10-12月期の実質GDP成長率は若干のマイナス成長に下方修正された。個人消費と企業の設備投資という民間需要の両輪が揃って落ち込み、輸出の伸び悩みも低成長の一因である。ユーロ圏の足を引っ張った主役がドイツだが、2023年1-3月期も小幅ながらマイナス成長になる可能性が高まっている。ドイツ連銀は、輸出の増加が限定的である他、高インフレと消費者の消極的な支出態度が重しになって、個人消費の回復力が弱い点を指摘している。
◆もっとも、ユーロ圏が、当初警戒されていたほどの落ち込みを回避したのも事実である。穏やかな天候や節約努力によってエネルギー需給逼迫への懸念が後退し、天然ガス等のエネルギー価格は下落している。また、各国政府が家計や企業に対して様々な支援策を実施して負担軽減を図り、部分的にインフレ率が抑制されたことも経済活動を支えたと考えられる。
◆欧州では暖房需要期の終盤に差し掛かっており、大きな課題だった目先のエネルギー危機を乗り切ったとみられる。だが、3月半ば以降、米国発の国際的な金融システム不安が欧州にも伝播し、新たな懸念材料となっている。短期間で収束すれば経済への影響は小さいだろうが、人々の疑心暗鬼を払拭するには時間を要する可能性があり、欧州金融機関の態度が企業や家計に与える影響にも注視する必要があろう。当面、ECBは、インフレ抑制に加えて、金融の安定を維持するという難題に対処しなければならない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日