サマリー
◆3月10日にシリコンバレーバンク、3月12日にシグネチャーバンクが経営破綻に至ったことで、米銀行セクターへの不安が強まった。とりわけ、シリコンバレーバンクに関しては、財務強化策を公表した日の翌日9日に預金の取り付け騒ぎが発生し、翌々日には現金支払いに対応できずに破綻に至るという急転直下の展開であった。
◆これに対し、経営破綻した両行の預金全額保護やFRBによる新たな流動性供給プログラムの創設、そして、米銀行大手11行によるファーストリパブリックバンクへの支援など、官民が協力し、迅速に対応した。こうした初期対応は、両行の経営破綻に伴う混乱が銀行システム全体に拡大することを防いだと評価できる。
◆しかし、一度不安心理が高まれば解消することは容易ではない。各銀行は手元流動性の確保に奔走している。また、銀行は市場の標的とならないよう、より安全志向な経営スタンスへと転換することも想定される。加えて、市場における信用リスクの再評価も進むだろう。つまりは、信用収縮が発生することによって、雇用環境や国内需要を急速に冷やすことが景気のリスク要因となる。
◆こうした中、一部の市場参加者の中で、FRBが金融政策を緩和的な方向へと修正していくのではないか、との期待がある。ただし、FRBが金融緩和へと拙速に修正してしまえば、懸案事項である高インフレが残存するリスクは高まる。FRBは金融不安と高インフレの間で板挟みになっており、金融政策を取り巻く不確実性が高まっていること自体も景気の下振れリスクとなり得るだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日