サマリー
◆2022年11月末に公表した大和総研レポートでは医療保険制度の各属性別の20歳~44歳の総出生率(GFR)を算出した。正規雇用女性を中心とした「被保険者」のGFRは2010年度頃から上昇する一方、専業主婦やパートで働く「被扶養者」では低下傾向にあることが明らかになった。もっとも、GFRは年齢構成の影響を大きく受けるため、本レポートではGFRから年齢構成の影響を可能な限り除去して合計特殊出生率(TFR)を推計した。推計TFRで見ても被保険者の出生率の上昇は2010年度頃から生じていたが、被扶養者の出生率が低下し始めたのは2015年度頃であった。
◆2015年は日本全体のTFRの転換点とも重なる。日本全体のTFRは2005年から2015年にかけて上昇したが、この間は、被保険者の推計TFRが上昇する中で、被扶養者の推計TFRは2.2~2.3程度で維持されていた。2015年度以後も被保険者の推計TFRは上昇を続けているが、日本全体のTFRは再び低下傾向にある。日本全体のTFRを引き上げるためには、仕事と子育ての両立支援を行い被保険者のTFRを上昇させるだけでなく、幼児期に家庭で子育てをする女性のいる世帯への子育て支援を強化し、被扶養者のTFRを回復させる必要もあることが示唆される。
◆協会けんぽのデータを用いて都道府県別に分析すると、被保険者と被扶養者の推計TFRはほぼ無相関であった。共働き世帯にとって子育てしやすい地域が、全ての世帯にとって子育てしやすい地域であるとは限らず、地域ごとにどのライフコースにおいて特に課題があるのかを分析し、対策を講じる必要性も示唆される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
2025年7-9月期GDP(2次速報)
設備投資などが減少し、実質GDPは前期比年率▲2.3%に下方修正
2025年12月08日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

