出生率の引き上げには在宅育児への支援強化も必要

医療保険属性別(被保険者・被扶養者別)の合計特殊出生率の推計

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2023年02月01日

サマリー

◆2022年11月末に公表した大和総研レポートでは医療保険制度の各属性別の20歳~44歳の総出生率(GFR)を算出した。正規雇用女性を中心とした「被保険者」のGFRは2010年度頃から上昇する一方、専業主婦やパートで働く「被扶養者」では低下傾向にあることが明らかになった。もっとも、GFRは年齢構成の影響を大きく受けるため、本レポートではGFRから年齢構成の影響を可能な限り除去して合計特殊出生率(TFR)を推計した。推計TFRで見ても被保険者の出生率の上昇は2010年度頃から生じていたが、被扶養者の出生率が低下し始めたのは2015年度頃であった。

◆2015年は日本全体のTFRの転換点とも重なる。日本全体のTFRは2005年から2015年にかけて上昇したが、この間は、被保険者の推計TFRが上昇する中で、被扶養者の推計TFRは2.2~2.3程度で維持されていた。2015年度以後も被保険者の推計TFRは上昇を続けているが、日本全体のTFRは再び低下傾向にある。日本全体のTFRを引き上げるためには、仕事と子育ての両立支援を行い被保険者のTFRを上昇させるだけでなく、幼児期に家庭で子育てをする女性のいる世帯への子育て支援を強化し、被扶養者のTFRを回復させる必要もあることが示唆される。

◆協会けんぽのデータを用いて都道府県別に分析すると、被保険者と被扶養者の推計TFRはほぼ無相関であった。共働き世帯にとって子育てしやすい地域が、全ての世帯にとって子育てしやすい地域であるとは限らず、地域ごとにどのライフコースにおいて特に課題があるのかを分析し、対策を講じる必要性も示唆される。

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