サマリー
この3年余り、経済をみる上で重視されてきたのが「コロナ禍前」との比較である。2020年初頭に新型コロナウイルス感染が瞬く間に世界に伝播した時、未知の感染症への対処方法として人の移動や接触を極力減らすほかなく、世界経済は急激かつ大幅に落ち込んだ。その後、感染拡大抑制と経済活動の両立が図られる中で経済の正常化が進み、2022年には多くの国で実質GDPがコロナ禍前の水準を回復した。厳格な経済封鎖を行わなかった日本では、経済正常化への取り組みが遅行した面があったが、2023年にはコロナ禍前の経済水準を回復できそうである。ただし、世界経済が直面する課題はコロナ禍による経済規模の縮小だけではない。多くの国でインフレ率はコロナ禍前を大幅に上回り、米欧の中央銀行は政策金利を大幅に引き上げてきたものの、もう一段の利上げが必要とみられる。金融引き締めを受けて資金調達コストが上昇する政府、企業、家計は、より効率的な資金配分が不可欠となる。政府部門は、ウクライナ支援、安全保障対策、温室効果ガス対策などの費用増大が見込まれる中で、財政の持続可能性をどう確保するかという難しい課題に直面する。そして企業部門では、次の成長に向けた設備投資と人的投資をいかにして重点的に実行するかがますます重要になるだろう。
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